【鈴木町駅の謎 その2】鈴木町までの地下化が中止になったのはなぜ?

謎

鈴木町駅を歩いていると、京急大師線はごく普通に地上を走っています。

ところが実はこの大師線、かつては京急川崎駅から小島新田駅まで、ほぼ全線を地下化する計画でした。

もし当初計画どおりに完成していたら、鈴木町駅周辺の景色も現在とは大きく違っていた可能性があります。では、なぜ地下化計画は途中で縮小されてしまったのでしょうか?

大師線には「ほぼ全線地下化」という壮大な計画があった

計画が都市計画決定されたのは1993年(平成5年)。

京急川崎駅から小島新田駅まで約5kmの大師線を、一部ルートを変更しながらほぼ全線地下化し、15か所あった踏切のうち14か所をなくすという大規模な計画でした。

目的は、

踏切渋滞の解消
踏切事故の防止
鉄道によって分断された街の一体化

などです。

工事は大きく、

1期区間:川崎大師~小島新田方面
2期区間:京急川崎~川崎大師方面

に分けて進められることになりました。ところが、この計画が思うようには進みませんでした。

 

最大の問題は「とにかくお金がかかる」

大師線地下化の総事業費は、約1,426億円。
そのうち、後から整備する予定だった2期区間だけでも、当初計画で約804億円と見込まれていました。

さらに実際に1期区間の工事を進めてみると、当初想定より工事費が膨らむ可能性が高くなりました。そこで川崎市は2017年、改めて「これだけのお金をかけて地下化する意味があるのか?」を検証します。

 

費用対効果を計算すると「0.87」

ここで登場するのが、B/C(費用便益比)という数字です。

簡単にいえば、かける費用に対して、どれだけ社会的なメリットが得られるかを数字にしたものです。

一般的には、

1.0を超える → 費用以上の効果が期待できる
1.0を下回る → 費用の方が効果を上回る

という見方をします。

大師線を当初計画どおり整備した場合のB/Cは、0.87でした。

つまり、100円かけても、評価上は87円分程度の効果しか見込めない

という結果です。一方、優先して整備する1期区間は、

B/C=1.02

でした。

そこで川崎市は、

「全部地下化するのではなく、効果の高い区間を優先しよう」

という判断をします。

 

交通量も計画当初ほど増えなかった

もう一つ大きかったのが、大師線沿線の交通環境の変化です。

1993年に計画した当時は、「今後さらに車が増え、踏切による渋滞も悪化する」と考えられていました。

ところがその後、周辺道路の交通量は、一部を除いておおむね横ばいで推移しました。

つまり、「将来もっと深刻になるから巨大な地下鉄道を造ろう」

という1990年代当時の前提そのものが変わってしまったのです。

 

2017年、京急川崎~川崎大師の地下化を中止

こうして2017年、京急川崎駅~川崎大師駅の2期区間について、連続立体交差事業を中止することが決まりました。

理由をまとめると、

① 莫大な事業費
② B/Cが0.87と1を下回った
③ 自動車交通量が当初想定ほど増えなかった
という複数の要因が重なったことになります。
 

では鈴木町駅はどうなる?

ここが少し分かりにくいところです。

地下化計画すべてが中止されたわけではありません。

東門前~鈴木町方面については引き続き地下化を進め、鈴木町駅の東側付近で地下線から現在の地上線へ戻す計画になっています。2017年の再評価でも「鈴木町駅の東側手前で現在線に摺り付ける」とされています。

さらに2026年現在、川崎市は旧2期区間の都市計画を廃止し、川崎大師駅から鈴木町駅方向へすり付ける形へ都市計画を変更する方針を示しています。

つまり将来、

小島新田方面 → 地下
↓
川崎大師方面 → 地下
↓
鈴木町付近 → 地上へ
↓
港町・京急川崎方面 → 地上

という少し不思議な構造になる予定です。

 

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