横浜駅からわずか一駅。JR京浜東北線・横浜線に加え、京急東神奈川駅も利用できる東神奈川は、交通利便性だけを見ればかなり恵まれた駅です。1日あたりの利用者数は、JRが約3万5,000人、京急が約2万2,000人。両駅を合わせて多くの人が利用しています。
駅前にはペデストリアンデッキが整備され、商業施設や区役所、タワーマンションも集まり、駅タイプとしては再開発型駅に該当します。一見すると横浜駅に近い便利な都市型住宅地に見えます。
しかし、実際に街を歩いてみると、その印象は少し変わります。
新しいタワーマンションの足元には、昔ながらの飲食店や商店が残り、駅のすぐ近くを複数の線路と幹線道路が通っています。整備された駅前と、どこか昭和の空気を残す路地が近接し、便利さと古さ、静けさと騒がしさが混在しています。
横浜駅の隣という抜群の立地にありながら、なぜ東神奈川は横浜駅周辺や鶴見駅ほど大規模な再開発が進まなかったのでしょうか。
今回は、JR東神奈川駅と京急東神奈川駅の周辺を歩き、この街の便利さと住みやすさ、そして発展しきれなかった理由を探っていきます。

タワマン、大型ビルが立ち並び華やかな駅前
【東神奈川駅名の由来】
東神奈川駅の「神奈川」は、江戸時代に東海道五十三次の宿場町として栄えた「神奈川宿」に由来します。
東神奈川駅が開業したのは1908年(明治41年)当時、すでに国鉄の「神奈川駅」が存在していました。その神奈川駅より東側に新設されたことから、「東神奈川駅」と名付けられたとされています。
多くは地名→駅名となるパターンが多いですが、東神奈川駅は駅名が先にあり、後から町名が付いたのも特徴です。現在の「東神奈川一丁目・二丁目」という町名は、駅名にちなんで命名されました。

東神奈川駅周辺の住みやすさを評価
💰家賃相場 ★★★☆☆
→横浜駅の隣で割安感もあるが、駅近は安くない。
🚃交通利便性 ★★★★★
→京浜東北線・横浜線が利用可能。京急東神奈川駅も利用可。
🚗車利用 ★★★★☆
→国道1号・国道15号が近く、首都高速も近い。交通量の多さと渋滞はネック。
🛒ショッピング ★★★★☆
→駅直結のシァルとイオンスタイルがメイン。駅周辺でほぼ完結。
🍜グルメ ★★★☆☆
→駅ビルや国道沿いを中心に飲食店は揃うも個性や選択肢は薄い。
🌊災害リスク ★★☆☆☆
→駅東側の臨海部は標高が低く、洪水や高潮、液状化に注意。
🏥生活インフラ ★★★★★
→スーパー、医療機関、区役所多数。公共施設近く、横浜駅も生活圏。
東神奈川駅周辺の家賃相場
| 間取り | 家賃相場 |
|---|---|
| ワンルーム | 約8.8万円 |
| 1K | 約10.2万円 |
| 1DK | 約12.4万円 |
| 1LDK | 約15.2万円 |
| 2DK | データなし |
| 2LDK | 約23.8万円 |
| 3LDK | 約24.8万円 |
東神奈川駅周辺に住むならこんな人におすすめ!居住者タイプ別評価
単身男性 ◎ 交通・買い物・外食のバランス良好
単身女性 ◎ 駅前が明るく、治安・買い物良好
カップル ◎ 横浜駅近くで通勤・休日ともに便利
ファミリー 〇 生活便利で歓楽街少なめも、公園・交通量がネック
学生 〇 学校は多いが、学生街としては家賃高め
高齢者 ◎ 駅前に買い物・医療・公共施設が揃う
外国人 ◎ 複数路線が使え、生活利便性も高い
利便性を最優先しつつ、横浜駅前の騒がしさは避けたい人におすすめの街。万人向けの駅前。
東神奈川駅周辺の商店街・商業施設
【イオンスタイル 東神奈川】
東神奈川駅西口から徒歩数分、国道1号沿いにある4階建ての大型総合スーパーです。食料品をはじめ、衣料品や日用品、飲食店などの各種専門店が揃っています。
1978年に「ニチイ東神奈川ショッピングデパート」として開業。その後、「東神奈川サティ(マイカル系)」「イオン東神奈川店」を経て、現在の「イオンスタイル東神奈川」へと店名を変えてきました。開業から半世紀近い歴史を持つ、東神奈川駅周辺を代表する商業施設です。
特に食品売場は7:00~23:00と営業時間が長く、通勤・通学の帰りにも利用しやすいのが特徴です。




存在感があるイオンスタイル東神奈川。ペデストリアンデッキと直結しており、タワーマンション側からも入店可能。
シァルプラット 東神奈川
東神奈川駅に直結する駅ビル型の商業施設です。生鮮食品や惣菜、飲食店、カフェ、ドラッグストア、生活サービス店などが入り、通勤・通学の途中に立ち寄りやすい構成となっています。
館内には成城石井、無印良品500、マクドナルド、大戸屋、天丼てんやなどがあり、4階にはスポーツクラブ「ジェクサー・フィットネス&スパ東神奈川」も入っています。


こちらもペデストリアンデッキ直結で店内に行ける。もちろん1階からの入店も可能。
2009年にできた建物で近代的。
マルエツ 東神奈川店
東神奈川駅西口から徒歩2分ほど、西神奈川交差点近くにある食品スーパーです。売場を回りやすく、食料品を手早く購入したいときに便利です。通常営業時間は10:00~22:00です。


こちらもペデストリアンデッキから直結しており、1階からも入店できます。東神奈川駅は歩行者動線がよく整備されており、駅周辺を移動しやすいのが特徴です。
東神奈川駅周辺は商店街の面白さは乏しいものの、駅ビル・大型スーパー・複数の食品スーパーが揃い、生活利便性は高い。
東神奈川駅周辺の見どころ・散歩スポット
【神奈川 熊野神社】
東神奈川駅西口から近い、地域の鎮守として親しまれている神社です。駅前の交通量が多い場所から少し入っただけで、落ち着いた境内が広がります。
神奈川宿の総鎮守として長い歴史を持ち、東神奈川駅周辺が近代的な街になる以前から、この地域を見守ってきた存在です。




華やかな駅前から一歩入った場所にあり、静かにたたずむ由緒ある神社。地域で親しまれている。
東神奈川駅前 5つの謎
💡【東神奈川駅前の謎 その1】なぜ横浜線の起点は横浜駅ではなく東神奈川駅なのか?
「横浜線」という名前から、横浜駅を起点とする路線を想像しますが、正式な区間は東神奈川駅から八王子駅までです。
その理由は、元々横浜線が現在のような通勤路線ではなく、八王子周辺で集められた生糸などを横浜港へ運ぶための鉄道として計画されたことにあります。前身の横浜鉄道は1908年、八王子駅―東神奈川駅間を開業しました。
当時の横浜駅は現在とは場所も鉄道の構造も異なっており、八王子方面から来た線路を横浜市街地まで直接延ばすより、東海道本線と接続でき、港にも近い東神奈川を終点とする方が都合がよかったと考えられます。
さらに、東神奈川駅から海側には東高島駅や海神奈川駅方面へ貨物線が延びていました。横浜線で運ばれてきた荷物は、東神奈川から港湾地区へ送ることができたため、旅客列車が横浜駅まで乗り入れる必要性は高くなかったのです。
横浜線の「横浜」は横浜駅を意味するのではなく、八王子と横浜港を結ぶ路線として名付けられたもの。港へ貨物を運ぶ際の接続地点として東神奈川駅が選ばれたため、現在もここが横浜線の起点となっています。
💡【東神奈川駅前の謎 その2】なぜ東神奈川をくぐる道は高さ2.8mしかないのか
東神奈川駅の線路下には、駅の東西を結ぶ「東神奈川地下道」があります。しかし、通行できる車両の高さはわずか2.8m。乗用車は問題なく通れますが、背の高いトラックやバスの多くは通過できません。高さ制限に気づかず進入し、車両が接触する事故が起きることもあります。
国道1号と15号を結ぶ割と使い勝手の良い主要な道路にもかかわらず、なぜこれほど低く造られたのでしょうか。
明確な設計理由を記した資料は確認できませんでしたが、最大の理由は、すでに多数の線路が敷かれていた場所へ、後から道路を通したためと考えられます。
鉄道の高さを変えず、道路も必要最低限だけ掘り下げた結果、2.8mの高さしか確保できなかった可能性が高いと考えられます。
可能性が高いと考えられます。
また、地下道が造られた当時は、現在ほど大型トラックやバスが一般的ではありませんでした。もともとは大型車を通す幹線道路ではなく、駅の東西を乗用車や小型車で移動するための地域道路として整備されたものが、都市化と交通量の増加によって重要性を増したのでしょう。
トラックなど背が高い車でここを通過するときはご注意ください

💡【東神奈川駅前の謎 その3】なぜ隣接する京急の駅は、長年「仲木戸駅」だったのか?
現在の京急東神奈川駅は、2020年まで「仲木戸駅」と呼ばれていました。JR東神奈川駅とは歩道橋で結ばれた乗換駅でありながら、長年まったく異なる駅名を名乗っていたのです。
その理由は、京急の駅の方がJR東神奈川駅より先に開業していたからです。
京急東神奈川駅の前身は、1905年に開業した「中木戸駅」です。一方、JR東神奈川駅が開業したのは1908年。京急側は、まだ東神奈川駅が存在しない時代に、周辺の一帯が「仲木戸横丁」と呼ばれていたことに由来した駅名を付けていました。その後、表記が「中木戸」から「仲木戸」へ変わり、100年以上にわたって使われました。
ところが、JR東神奈川駅と隣接しているにもかかわらず駅名が異なるため、両駅が乗換可能であることが利用者に十分認識されていませんでした。そこで京急は、乗り間違いを防ぎ、乗換駅としての利便性を高めるため、2020年3月14日に「京急東神奈川駅」へ改称しました。
100年以上使われた「仲木戸」という歴史ある駅名も、結果的に、京急側がJRの駅名へ合わせた形です。鉄道案内におけるJRの影響力の強さを物語っています。


💡【東神奈川駅前の謎 その4】なぜ再開発されたのに、再開発された感じがしないのか?
東神奈川駅東口では、駅前広場や歩行者デッキ、高層マンション、商業施設、福祉施設などが整備されています。横浜市によると、東口周辺では合計4つの再開発・整備事業が実施され、2019年に完成した東神奈川一丁目地区をもって、駅周辺の拠点整備はひと区切りを迎えました。
それにもかかわらず、実際に歩いてみると、武蔵小杉や川崎駅西口のような「再開発された街」という印象はあまり受けません。「えっ?再開発された街なの?」という声も聞かれます。
その理由の一つは、駅前一帯をまとめて造り替えたのではなく、複数の小規模な事業を長い年月をかけて進めたためです。
最初の東神奈川駅東口地区の再開発は2002年に完了し、駅前地区の整備も2004年に完了しています。最後の東神奈川一丁目地区が完成したのは2019年ですが、初期に整備された建物やデッキはすでに20年以上が経過しています。
また、東神奈川の再開発は、大型ショッピングモールやオフィス街を造って遠方から人を集めるものではありませんでした。中心となったのは、住宅、駅前広場、歩行者動線、生活施設、福祉施設などの整備です。
つまり、街を華やかな商業地へ変える再開発というより、「駅前に住む人や利用者が、日常生活を送りやすくするための再開発」だったのです。
さらに、再開発地区の外側には、古い建物や国道、JR・京急の線路がそのまま残っています。新しい建物も駅前の一部に分散しているため、街全体が一体的に新しくなったようには見えません。




長い年月をかけて段階的に再開発されたため、街並みの新しさには場所ごとに温度差がある。
💡【東神奈川駅前の謎 その5】昔使っていた貨物線はどこに消えた?旅客利用されなかった理由は?
横浜線の前身である横浜鉄道は、八王子や甲信地方で生産された生糸などを横浜港へ運ぶ目的で建設された鉄道です。東神奈川駅から港へ向かう貨物支線は、その目的を実現する重要なルートでした。
当時は、おおむね次のようにつながっていました。
八王子方面
↓ 横浜線
東神奈川駅
↓ 貨物支線
東高島駅・海神奈川駅
↓
横浜港の倉庫・埠頭
その後、日本の主要輸出品が生糸から工業製品へ移り、八王子方面から横浜港へ運ばれる貨物も減少しました。加えて、港湾貨物は鶴見方面から東高島を通る高島線へ集約され、トラック輸送も普及します。こうして東神奈川駅から港へ直接延びる貨物支線は役割を失い、1959年に廃止されました。
生糸産業の衰退や物流構造の変化が、東神奈川貨物線の廃止につながったといえるでしょう。
なぜ旅客線として残さなかったのか?
貨物線の終点や沿線は横浜港の倉庫・埠頭に近く、一般の住宅地からは離れていました。鶴見線沿線や南武支線のように大規模な工場が連続していたわけでもなく、東神奈川駅からの距離も比較的短かったため、旅客路線として残すほどの需要は生まれなかったと考えられます。
東神奈川駅前の今後の展望
東神奈川駅前では、すでに駅前広場や歩行者デッキ、高層住宅、商業・福祉施設などの整備が進み、駅前の大規模な再開発はひと区切りを迎えています。そのため、今後駅前に大型商業施設や超高層ビルが次々と建つ可能性は高くありません。
一方、今後大きく変化する可能性があるのは、駅の東側に広がる臨海部です。東高島駅北地区では、遊休化した水域や工場用地を再編し、道路や宅地を整備する土地区画整理事業が進められています。横浜市はこの地区を、医療・健康・居住などの機能を備えた、新たな都心の一部として整備する方針です。
ただし、東高島駅北地区と東神奈川駅前の間には、京急線、国道15号、貨物線などがあり、現在は街の連続性が弱いのが課題です。横浜市の計画でも、臨海部への新たなバス路線、歩行者環境の整備、国道15号を横断する歩道橋のバリアフリー化などが検討されています。
また、高さ制限2.8mの東神奈川地下道を含む横浜上麻生線の未整備区間についても、将来的な整備方針が示されています。ただし、JRの多数の線路をくぐる難工事となるため、早期に大きく改善するかは不透明です。
東神奈川駅前調査のまとめ
東神奈川駅は、横浜・川崎・新横浜へ乗り換えなしでアクセスできる利便性の高い駅です。京急東神奈川駅も利用でき、周辺には主要道路も通っているため、電車でも車でも積極的に出かけたい人に向いています。
一方で、東神奈川は長い歴史を持つ駅でもあります。再開発された新しい街並みの中に、昔ながらの建物や鉄道の面影が残り、新旧が混在する個性的な景観が形成されています。
東口には「ザ・ステーションタワー東神奈川」や「Brillia Tower 横浜 東神奈川」といった比較的新しいタワーマンションが建つ一方、西口には築年数を重ねた「スカイハイツトーカイ」が存在します。新旧のタワーマンションが駅を挟んで共存している点も、東神奈川駅前の面白さといえるでしょう。
駅周辺にはペデストリアンデッキが整備されており、駅や商業施設、住宅地の間を快適に移動できます。少し足を延ばせば東白楽駅も利用でき、行き先に応じて路線を使い分けることも可能です。
交通利便性、買い物環境、歩きやすさ、歴史ある街並みをバランスよく備えており、東神奈川は幅広い層に勧めやすい駅だと感じました。
おまけ


個性的な飲み屋が多い印象。仕事帰りの一杯にはおすすめの駅前です。

横浜市神奈川区民文化センター「かなっくホール」
コンサートホール、ギャラリー、音楽ルームや練習室など、あり様々なイベントが行われる

