【鶴見市場】『市場』はどこへ消えた?古い商店街と第一京浜が交差する街

京急本線 鶴見市場駅|駅前ウォッチャーズ #33

横浜市鶴見区にある京急本線・鶴見市場駅。1日平均利用者数は約2.0万人である。駅の区分としては幹線道路並行型である。線路と並行して走る幹線道路の間のみの商圏となり、発展はしにくい街である。

京急川崎と京急鶴見という大きな駅に挟まれた小さな駅で、駅前にロータリーも大型商業施設もありません。

しかし街を歩いてみると、「市場銀座商店街」の看板、昔ながらの細い道路、寺社、そして住宅地のすぐ横を走る京急線など、どこか懐かしい風景が残っています。

そして何より気になるのが駅名です。

「鶴見市場」というからには、昔ここに市場があったのでしょうか?

調べてみると、この「市場」という地名はかなり古く、かつて海が近かった時代の鶴見の姿までさかのぼります。

今回は鶴見市場駅を歩きながら、駅名に残された「市場」の謎と、現在の街の姿を探ってみました。

住宅街の一角にあるような駅入り口。改札口も大きくはない。

 

駅の名前の由来は

鶴見市場を訪れたら、やはり最初に気になるのが駅名です。現在の駅前を見ても、大規模な市場らしい施設は見当たりません。

しかし「市場」は比較的新しく付けられた名称ではありません。

京急によると、この付近にはかつて海があり、漁業や製塩業で暮らす人が多かったとされています。そして天文年間(1532~1554年)ごろになると、海産物を売買する「市」が開かれるようになったことから「市場」という地名になったと伝えられています。

鶴見市場の「市場」は、現代の卸売市場などを意味しているわけではなく、約500年前の「市」の記憶だったのです。

現在は海岸線も遠くなり、住宅やマンションが建ち並ぶ街ですが、「鶴見市場」という駅名だけは、この場所が海とともに暮らしていた時代を今に伝えています。

駅前の風景。市場どころかここに市場があったんだろうなと感じる場所すらない。

 

鶴見市場駅前の住みやすさを評価

💰 家賃相場  ★★★
川崎・鶴見に近い割には比較的狙いやすい。

🚃 交通利便性 ★★☆☆
京急川崎・京急鶴見近いが各停のみ

🚗 車利用   ★★★
第一京浜がすぐ。首都高までもまずまず

🛒 ショッピング ★★☆☆
コンビニ、ドラッグストアはあるが、スーパーがないのが不便

🍜 グルメ   ★★☆☆
割と飲み屋系は多いが、シャッター状態もみられる

🌊 災害安全性 ★★☆☆
鶴見川そばでハザードマップにかかる

🏥 生活インフラ ★★☆☆
公園・役所がなく、病院も少なめ

駅前だけ採点すると低得点。でも住民は多く、味がある街。

 

鶴見市場駅周辺の家賃相場

間取りおおよその相場
ワンルーム6.5~8万円
1K8~9万円
1DK8.5~10万円
1LDK12~13万円
2LDK14~16万円
3LDK20万円前後~

京急川崎・京急鶴見の中間という便利な立地ながら、家賃は両駅の中心部より抑えやすい。単身向けは7~9万円台が中心で、川崎・横浜方面へ通勤する人にとってはコストと利便性のバランスが良いエリア。

 

鶴見市場駅周辺に住むならこんな人におすすめ!居住者タイプ別評価

単身男性  
→ 川崎・横浜へのアクセス良。飲み屋飲食まずまず

単身女性  ○
→ 夜は静かな道も多いため物件位置は確認したい。

カップル  ○
→ 川崎・鶴見を生活圏として使えるのが強み。

ファミリー △
→ 大型スーパーが近くにないのが痛い。車あれば〇

学生    ○
→ 京急沿線への通学なら便利。駅前の娯楽施設は少ない。

高齢者   ○
→ 平坦な場所が多いのはメリット。日常的な買い物環境も確保されている。

外国人   ○
→ 物件の手ごろさもあり外国人住民も見られる。

 

鶴見市場駅周辺の商店街・商業施設

市場銀座商店街

鶴見市場駅東側に広がる昔ながらの商店街。駅前ウォッチャーズの法則〇〇銀座はシャッター街になりやすいに当てはまってしまいます。しかし、まったく稼働してないわけではなく個人商店や飲食店が、味を出して営業してます。地域密着型の店が多く駅前から三方向へ伸びる道路と昔ながらの街並みは、鶴見市場らしい味わいのある風景です。

レトロな雰囲気あふれる街並み。その中にも利用価値ある店を探す楽しみがある街。

 

鶴見市場駅周辺の見どころ・散歩スポット

横浜熊野神社

鶴見市場駅近くに鎮座する歴史ある神社。明治5年(1872年)の東海道線敷設に伴い現在地へ移されたという珍しい歴史を持つ。毎年8月には例大祭も行われ、地域の氏神として現在も親しまれている。

旧東海道沿いにある由緒ある神社。古い建物は味がある。

 

鶴見市場駅前 4つの謎

【鶴見市場駅前の謎 その1】なぜ市場がなくても市場という名前がずっと使われてきたのか

鶴見市場駅に降りても、肝心の「市場」はどこにも見当たりません。
では、なぜ現在まで「市場」という名前が残っているのでしょうか。

その歴史は意外なほど古く、京急によると天文年間(1532~1554年)ごろまでさかのぼります。当時この付近は現在より海が近く、漁業や製塩業が盛んな地域でした。そこで海産物を売買する「市」が開かれるようになったことから、「市場」と呼ばれるようになったとされています。

その後、「市場」は地域名として定着し、江戸時代には「市場村」と呼ばれるようになります。

つまり、

「海産物の市が開かれる」
→「市場という地名が定着する」
→「市場村となる」
→「市場上町・市場下町・市場銀座商店街などに名前が残る」
→「駅も鶴見市場駅と名付けられる」

という流れです。

つまり現在の「鶴見市場」という名前は、今ここに市場があることを表しているのではなく、かつての市場を由来とする地名が駅名になったものだったのです。

 

【鶴見市場駅前の謎 その2】駅近くのゴム通りにゴム感が全くないのはなぜ?

鶴見市場駅から第一京浜方面へ歩くと、「ゴム通り」と呼ばれる道路があります。

ところが実際に歩いてみても、タイヤ屋さんが並んでいるわけでもなければ、ゴム工場があるわけでもありません。

では、なぜ「ゴム通り」なのでしょうか?

ちなみに管理人まちおは若い頃、ゴム通り沿いにあったラブホテル「ニューヨーク」を見て、「このホテルがあるからゴム通りなのか」と本気で思っていました(笑)。

もちろん、そんなわけはありません。正解はこの名前、かつてこの周辺にあった横浜ゴムの工場に由来しています。

横浜ゴムの前身である横濱護謨製造は、この地域に横浜工場を構えていました。工場ではタイヤやベルトなどのゴム製品が製造され、その存在から周辺道路が「ゴム通り」と呼ばれるようになったとされています。

しかし工場は1945年の空襲によって大きな被害を受け、その後この地から姿を消しました。

つまり、

「横浜ゴムの工場があった」
→「ゴム通りと呼ばれるようになった」
→「工場がなくなる」
→「ゴム通りという名前だけが残った」

というわけです。

横浜ゴムの工場もなければ、そのニューヨークも現在は閉業。

ゴムはなくなっても、「ゴム通り」という名前だけは今も残っている。

美しい片側2車線の道路。渋滞も少なく通りやすい。右はラブホテル「ニューヨーク」の跡地。現在マンション建設中。

 

【鶴見市場駅前の謎 その3】熊野神社はなぜ移動した?

鶴見市場駅からほど近い住宅街にある「横浜熊野神社」。実はこの神社、最初から現在の場所にあったわけではありません。では、なぜ神社をわざわざ移動させたのでしょうか?

理由はなんと、日本初の鉄道建設でした。

1872年(明治5年)、新橋~横浜間に日本で初めての鉄道が開業します。その線路を敷設する際、熊野神社の境内が予定地にかかってしまったため、現在の場所へ移されたと伝えられています。

しかも面白いのが、その移動方法。

社殿を一度解体して建て直したのではなく、社殿の下に丸太を敷き、大勢の人が綱で引っ張って移動させたと伝えられています。

つまり、

「日本初の鉄道を造る」
→「予定地に熊野神社がある」
→「それなら神社を動かそう」
→「丸太に載せて人力で移動」

という、現在ではなかなか想像できない方法だったのです。

そして、そのとき熊野神社を動かして造られた鉄道が、現在のJR東海道線・京浜東北線などが走る鉄道用地につながっていると考えると面白いものです。

現在の熊野神社を訪れても、周囲はすっかり住宅街。ここに日本初の鉄道建設と関係する歴史が隠れているとは、知らなければまず気付きません。

鉄道が神社を避けたのではなく、神社の方が鉄道に道を譲った。

鶴見市場には、日本の鉄道黎明期を物語る意外な歴史が残されていました。

創建は弘仁年間(810~824年)1200年の歴史ある神社を、日本初の鉄道を通すために動かした

 

【鶴見市場駅前の謎 その4】箱根駅伝の鶴見中継所は、なぜここにある?

箱根駅伝の往路最初の中継地点「鶴見中継所」。名前は鶴見ですが、実際は鶴見市場駅前にあります。

もちろん区間距離の都合もあるでしょう。しかし2区は1区より長く、「花の2区」と呼ばれてきた区間。距離だけなら、もう少し鶴見駅寄りでもよさそうです。

ではなぜここなのでしょう?

そこで現地を歩くと、その答えが見えてきました。中継所付近は第一京浜と並行する道路が広く取られており、選手や大会関係者が集まるスペースを確保しやすいことに気付きます。また第一京浜本線から外れているため、中継時の交通への影響も抑えやすそうです。

詳細な選定理由は確認できませんでしたが、管理人まちおは、

「距離的に鶴見周辺がちょうどよく、その中でも中継所を設置しやすい道路構造だったから」

ではないかと考えました。

片側2車線の広い道路の脇にも1本道があるのが見える。普段はここを使うのは地元民しかいなくこの場所を使えば箱根駅伝の時の交通制限を最小限に抑えられる。

往路中継所のそばには駅伝のモニュメントが存在する

鶴見市場駅前の今後の展望

何百年という歴史の名残を見せる鶴見市場駅。現在のところ街を大きく変えるような再開発計画は見当たりません。

駅周辺はすでに住宅や商店が密集し、第一京浜沿いもまとまった土地が少ないため、大型商業施設や大規模な駅前開発が行われる可能性は低そうです。

一方で、川崎・鶴見に近い立地から住宅需要は今後も期待できます。鶴見区自体も人口約30万人で、横浜市内でも人口が多く、現在も増加傾向にあります。

そのため鶴見市場は、古い建物が少しずつマンションなどへ建て替わりながら、現在の街並みを残した住宅地として更新されていく可能性が高いでしょう。

大きく化ける街ではないかもしれませんが、昔ながらの商店や三叉路の街並みを残しつつ、新しい住宅が混ざっていく――。

「再開発されないことも、この街の味」

そんな鶴見市場らしい変化を続けていきそうです。

 

まとめ

評価では割と厳しめの採点になってしまった鶴見市場。しかし実際に歩いてみると、昔ながらの商店や飲食店が残り、駅東側に広がる独特の街並みなど、どこか味のある個性的な駅前だと感じました。

管理人まちお的には、結構アリな駅前です。

旧東海道の名残を感じる街並みの中で暮らしながら、川崎と鶴見の両方を生活圏として使える立地も魅力。駅前の便利さだけでは測れない、知る人ぞ知る穴場駅なのかもしれませんね。

 

おまけ

シンプルな駅舎。踏切と線路の距離が近く、急行通過時はちょっと怖いですね。

 

恒例のランチ。飲み屋かねイシでいただきました「豚焼肉定食」1,200円。これだけでもおなか一杯なのに、追加でうどんもついてきました!